ペスト:カミュ

(引用)
~頻繁に、ただの不機嫌だけに原因する喧嘩が起り、この不機嫌は慢性的なものになってきた。
最初の電車が通って行ってから、町は次第に目ざめ、一番早いビヤホールが、
≪コーヒー売り切れ≫≪砂糖ご持参ください≫等々のはり紙のあるカウンターに面して戸を開く。~

(内容)
平穏なみすぼらしい町で発生したペストの大流行。最初は静かに蔓延するペスト菌。そしてある時から加速度的に増えていくペスト感染者と死亡者数。町は完全に封鎖、隔離され、全ての人が外に出る事は許さない。
そのような状況で必死に治療にあたる医師リウーに、周囲の人もそれに感化され考え、行動が変わっていく。
行政・医師会などは問題の本質解決からかけ離れた対応しかできない中、正義感と熱意のある一人の医師が孤軍奮闘する。

【感想】
本作においては、状況が急速に悪化する中、当事者たちの生活・習慣は、諦めなのか、意外にゆっくりとしか変化しません。
昨日までいたお爺さんがいない。風景が徐々に衰退していく・・。これらは、SNSにより一瞬で世界中に拡散される現代と大きく違います。
一方、少年が感染し、投薬してから死に至る様は、壮絶で読むに堪えられません。
医師リウーは、一人の力は微力と分かっていながら、感染者の治療に自らを犠牲にして尽くします。
最後の一文≪天災のさなかで教えられること、すなわち人間のなかには軽蔑すべきものよりも賛美すべきもののほうが多くあるということ≫これは、きっとそうなのでしょう。そうであって欲しいと願います。

個人的にこの本にお薦めのコーヒーは🛒ブラジルです。コーヒーの中でも最も日常的な銘柄の一つだからです。
このような非常時に日常のありがたみを感じながら。

タイトルとURLをコピーしました